研究室について

宇宙の主役は、星の数ほど存在する光り輝く「恒星たち」です。それらの周りに漂う「惑星たち」は、その無視可能な「余り」にすぎません。太陽系だと惑星が占めるのは質量の1/700、明るさの1/4億に過ぎませんから。しかしここは、数十〜数百Kという「中途半端な温度」に温められ、固体・流体・分子気体が共存したまま蓄積できる貴重な「漂流物」なのです。「宇宙で最も複雑なもの、それ汝、惑星なり!」

我々の地球は、こうした「星の数ほどある惑星」の1つです。とはいえ、その環境はありふれたものではない。広い宇宙はいざ知らず、少なくとも太陽系の中では唯一無二の存在であることに、皆さん御同意頂けるでしょう。その理由の1つは、惑星の大気が、「最も多様で脆弱」な領域であるからです。その下端は地殻・海洋につながり、その上端は太陽・宇宙に開かれ、双方から圧倒的な影響を受ける、最も質量の小さな領域。火星の永久凍結状態、金星の暴走温室状態、これらは過去・現在・未来に我々がありえた・ありえる姿です。温暖化問題が叫ばれて久しいですが、吹けば飛ぶような「この惑星の大気の底」は未来もこのままか、我々は今後もここで生存していけるのか。この環境の脆弱さへの理解は、その疑問への回答となります。

これが、我々の研究室の研究対象です。地球・火星・金星といった兄弟ながら異なった履歴を辿った惑星、木星・土星といったエネルギッシュで巨大な惑星、初期太陽系や他恒星を巡る系外惑星。これらが持つ数十〜0.1気圧の「風が舞い嵐が吹く大気」から、スペースシャトルが飛びオーロラが輝き太陽風と出会う「超高層の希薄大気」。こうした「気象庁や気象予報士が気にしてくれない大気」の現在、過去、未来の全てが我々の守備範囲になります。

時間的にも空間的にも多様で大きく変動するこの領域は、理学・工学に跨る国際的・学際的研究の場です。その最強力な手段が宇宙からのリモートセンシング、すなわち「人工衛星・惑星探査機による全球観測」です。我々の「教科書」は、数年おきに出現するこうした新探査で塗り替えられ、なかなか安定しません。とはいえ、日本だけでなく世界でもその機会は貴重で、我々の研究は国際協力に基づくものになります。すなわち、自分達の衛星・探査機を開発し打ち上げつつ、それをネタにして米・欧・ロの研究者と組んで彼らの衛星・探査機にも参加、これらを長年の努力で積み上げた地上望遠鏡や計算機シミュレーションでフォローしていきます。幸い、積み上げてきた努力が実を結び、2017年は幸か不幸か JAXAの金星探査機Akatuki(2016/4 観測開始)・惑星紫外線望遠鏡衛星Hisaki(2013/11 観測開始)・地球放射線帯観測衛星ERG(2017/3 観測開始)を旗頭に、米火星探査機MAVEN(2014観測開始)、欧火星探査機ExoMars Trace Gas Orbiter(2017年末観測開始予定)、米木星探査機Juno(2016/7 観測開始)と宇宙機側が大渋滞.ハワイのSUBARU・NASA/IRTF望遠鏡,マウイ島の東北大60cm望遠鏡,および数値計算研究を噛み合わせつつ必死になってこれらを撃破しつつある状況にあります。幾つかの成果は、すでに本研究室や関係機関のWebサイトで美しい画像をお楽しみいただけるかと。

我々の研究室は、遅ればせながら日本が惑星探査機とそれに必要なロケットの開発を始めた時代、1993年に新設されました。スタッフ4名、研究員2名、秘書1名、博士3名、修士5名、4年生3名、客員准教授1名(情報通信研究機構),客員研究員2名(情報通信研究機構、ベルギー超高層大気研究所)が,3つの大部屋でガヤガヤやっています。住処は地下鉄青葉山駅を出てすぐの合同C棟「曲がった建屋」3階、セブンイレブンのすぐ上。同じ階に、同じく地球物理専攻に属する電離大気・電波レーダ部隊「宇宙地球電磁気分野」、惑星専用地上望遠鏡を宮城・福島・ハワイで振り回す「惑星プラズマ大気研究センター」もあります。これら3つからなる「惑星圏研究グループ」は、理・地学専攻、工・航空宇宙工学専攻、流体科学研などともタッグを組みつつ、日本と世界の宇宙科学探査の一翼を担って、苦楽を共に邁進中です。