[2017/6/30] NASA Juno探査機を支える「すばる」中間赤外線観測

木星8.8um赤外線画像 (May 18, 2017)

(by 笠羽)
私共、2016年7月から周回軌道に入り活動中のアメリカの木星探査機 Junoとの共同観測をNASA/ジェット推進研究所[JPL]のGlenn Orton博士らと行なって来ました。このうち、国立天文台 Subaru 8m望遠鏡の COMICS(冷却中間赤外線分光撮像器)を使って行われてきた観測成果が、NASA/JPLと国立天文台SubaruのWebページで公表されましたので、こちらでも紹介いたします。
[NASA:  英語Link]     [NASA/JPL 英語Link]    [国立天文台Subaru観測所:  日本語link  / 英語link ]

Subaru-COMICSのJuno探査機との同時協調観測は、2017年1月11-15日と5月16-19日に行われ、日本側からは私(1/11-12・5/18-19の観測責任者)、佐藤隆雄くん(本研究室で2012/3博士。JAXA宇宙科学研)、北元くん(PPARCで2016/3博士、当研究室所属)が現地参加しております。軽量化・低コスト化の都合から、Junoでは対流圏〜成層圏の情報を握る中間赤外域の観測手段を搭載せず、「地上観測で補完する」という戦略を取っています。より惑星深部を見るマイクロ波電波、より高高度の熱圏・オーロラ発光域を見る紫外線・近赤外線の観測装置は搭載していますが、この間をつなぐ手段が「地球からの中間赤外線地上観測」です。SubaruのCOMICSは、近年ではほぼ世界唯一の広帯域中間赤外分光が可能な装置で、Juno探査機への支援手段として大変貴重です。日本は打ち上げ当時、直接この探査機チームに参加していなかったのですが、Subaru COMICSによって貴重な貢献をなすことができ、感謝しております。

特に5月の観測は、Juno探査機の「第6回最接近観測」の前後をカバーする形で行われ、Juno探査機が通過する直下領域を含む木星雲層〜成層圏大気の温度場と雲層厚、およびその運動と時間変化を与えることができました。下記写真では、有名な大赤斑とそれを包み込む激しい大気擾乱が見られます。Juno探査機が観測する初の深部情報(100気圧域にまで達する)と結合させることで、これまで得られなかった初の「3次元大気情報」を得ることが可能となります。好天に恵まれたこの観測で、Subaruはその大口径を生かし約1,000-kmの空間分解能を得ることができましたが、これは Juno探査機最接近時におけるマイクロ波観測の空間分解能に匹敵するものです。

木星は、電離したイオ噴出ガスが駆動する太陽系で最も激しいオーロラ発光をその南北両極に擁します。1月・5月のCOMICS観測では、この発光高度(〜500-3,000 km)よりも低い成層圏高度でメタンの発光が見られることも明らかにしています。これは、オーロラを光らせる高エネルギー粒子が大気へ深く侵入し、木星大気を温めまたC・H系有機物を生成する化学反応を引き起こすことを示しています。こうした「高エネルギー粒子の衝突による加熱と有機化学反応」は、かってメタン等も存在したであろう原始地球大気でも起きた可能性がある現象です。東北大では、私共も中核を担う JAXA「ひさき」紫外線・極端紫外線望遠鏡衛星東北大望遠鏡施設(ハレアカラ:光赤外、蔵王・飯館:電波観測)で、木星の強烈な放射線帯活動、イオ火山活動、これらと結合する木星オーロラ・磁気圏活動を長期連続観測しており、Juno探査機最接近データとの結合解析を進行させつつあります。その成果もお楽しみに。

これらの成果は、搭載装置提供によって参加予定の欧州木星探査機JUICEによる低周波電波(RPWI)、サブミリ波電波(SWI)による観測にも活かされていく予定です。

木星8.8um赤外線画像 (May 18, 2017)

Subaru COMICSで撮像された木星8.8um赤外線画像 (May 18, 2017) [Credit: NASA/JPL, 国立天文台]。Juno探査機が「第6回最接近観測」を行う直前の木星大気、特に対流圏〜成層圏の温度場とアンモニア雲層厚の情報を提供し、Junoが観測する大気深部(雲層下〜100気圧:マイクロ波)と熱圏・オーロラ(高度数百km以上、紫外線・近赤外)をつなぐ。Movieもこちらにあります

<Link: 2016年1月の Subaru – COMICSでの木星予備観測風景>

なお、その他のlinkです。
[HawaiiのTV]  http://khon2.com/2017/07/10/hilo-scientists-assisting-in-exploration-of-jupiter/

<日本語>
[大学]     http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/07/award20170703-01.html
[理]         http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20170703-9182.html
[地物]     http://www.gp.tohoku.ac.jp/information/news/20170703162305.html

<英語>
[大学]     http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/07/award20170703-01.html
[理]         http://www.sci.tohoku.ac.jp/english/news/20170706-9189.html

[MILAHI]アップデート @Haleakala, Maui

5月21日から31日まで、東北大学が開発している中間赤外レーザーヘテロダイン分光器(Mid-Infrared LAser Heterodyne Instrument: MILAHI)に新しいデジタル分光器をセットしに行きました。

地球と惑星の公転周期(速度)の差によって、惑星からくる光はドップラー効果によって本来の周波数からずれてしまいます。このずれをヘテロダイン分光器では捉えるわけですが、2.5GHzの周波数帯域を持つ新デジタル分光器ではMILAHIのターゲットとなる惑星の火星、金星の最大のドップラー効果による周波数のずれ(火星:1600MHz、金星:1400MHz)でも十分にスペクトル捉えることができるようになります。

アップデートしたMILAHIで取られた金星の波長10µmのCO2 non-LTE放射のスペクトルが下図になります。このグラフの横軸は周波数のずれ[MHz]、縦軸は地球大気との相対強度になります。こちらは、5分間積分したデータになりますが、実際には20分ほどの観測データを積分してノイズを小さくして風速や温度を取り出します。今回のデジタル分光器の設置で、これからのMILAHIでの観測の幅がさらに広がりました。(高見)

[2017/4/11] うちの機器@あらせ君,宇宙に響く「ぴよぴよ」声を捉える!

(by 笠羽)
JAXAのジオスペース観測衛星・あらせ君 [ERG: Exploration of energization and Radiation in Geospace] が,約3か月にわたる観測準備を無事終了し、3月24日から定常運用に移行しました。太陽活動に伴って大きく変動する地球周辺の宇宙空間、人類の宇宙活動の現場でもあるこの領域での高エネルギー粒子や電磁波などの観測が本格的に始まります。
[JAXA発表: http://www.isas.jaxa.jp/topics/000920.html]

この衛星プロジェクトは、平成25年12月に逝去された小野高幸名誉教授をリーダーとして開始されました。小野教授の心血が注がれたこの衛星には、私他の本学メンバーもまた心血を注いたプラズマ波動・電場観測器(PWE) [この紹介Webを作ろうとしていますが,暇がない・・・]、およびPWEを含め複数機器の観測データをまとめて処理するS-WPIA(ソフトウェア型波動-粒子相互作用解析装置)が搭載され、本衛星の主役をなします。
[東北大学の関わり] http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20161003-8051.html

現在,地球上各点に配置されたオーロラ観測拠点などとの共同観測を実施中(明日〜明後日,この総括研究会があります)で,その基本となる「コーラス」電波を確実にとらえることに成功しました・・・ので,最初のプレスリリースをだしました。可聴域でもある数kHzの周波数帯で発生し、音声に変換すると「小鳥のさえずり」が聞こえます(笠原さん@金沢大Webで聞くことができます)。このコーラスは、高エネルギー粒子群に満ち溢れた「ヴァン・アレン帯(放射線帯)」の消長に関わると提唱されており,あらせ君による「太陽によって変動する宇宙環境の擾乱」において最初の本命目標です.
なお,この電波を捉えるため,この衛星に関係する方々には,我々の一方的お願いである「電場の雑音出さないでね!」「磁場の雑音出さないでね!」「30mのアンテナ,ちゃんと伸ばしてね!」・・・という度重なるわがままに耐えて頂きました.チームの一員として,ここで深く御礼申し上げます.
次の発表としては,「ぴよぴよ声が電子を揺らす様を捉える! (by SWPIA)」を目指します.
[東北大学Press Release] http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20170411-9033.html
[金沢大学Press Release] https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/45590

<下図> 電場X/Y/Z,磁場X/Y/Zの6成分で見える「コーラス」電波(横軸:8秒間,縦軸:0-2kHz).この電波によって宇宙空間の電子が揺らされ,また電子が揺れてこの電波を作り・・・・というエネルギーのやりとりが,光速に近い速度で飛び回る放射線帯の粒子を作る・・・とされています.この確定的証拠を握るのが,ERGの目標の1つ.なお,宇宙を飛翔する衛星・探査機や有人活動は,こうした高い放射線を避け,また耐えながら,やっていく必要があります.(我々の場合,もっとひどい「木星」の環境で動かす必要があります....)

<おまけの図> 放射線帯(ヴァンアレン帯)を飛翔するあらせ君(© ERG project)と,それを見守る上杉神社のお札(1つは私の部屋,もう1つは宇宙研の運用室にあり).
ERG (© ERG project)MINOLTA DIGITAL CAMERA

[2017/3/3] 金星探査機「あかつき」搭載のIR1・IR2、科学観測を休止 (news)

金星探査機「あかつき」に搭載された5つのカメラのうちの1つ,IR1・IR2(近赤外線用)が,観測を休止しました.
http://www.isas.jaxa.jp/topics/000901.html

昨年12月翌12月10日以降,両カメラの電源が投入できない状態です.あかつきは長期間の寄り道をしてきた結果,2010年打上げ以降すでに7年を経過しており,機器劣化のためなのでしょう.2016年末の軌道投入成功以降,ようやくデータが蓄積されつつあるところで,残念です.

東北大では,私がIR2の共同研究者,坂野井がIR1の共同研究者です.IR2の検出器は,今年度で退任される天文専攻の市川先生ともども修士の際にいじり倒していた曰く付きのもの.(先日の市川先生の最終講義でいきなりその写真が登場.当時を思い出すとなんとも言いようがない気分です.)

とはいえ,ここまで1年間蓄積されてきたデータはあり,また今後も観測が続くUVI(紫外線)・LIR(中間赤外線)カメラの観測は続きます.うちのメンバーは,これらの観測解析を地上観測・数値シミュレーションと噛み合わせつつ,研究を継続して行く予定です.

[2016/12/14] NASA Group Achievement Awardを受賞 — 火星探査機MAVEN

寺田直樹准教授、中川広務助教、寺田香織研究員、黒田剛史客員研究員が火星探査衛星MAVEN Science Teamの一員としてNASAよりGroup Achievement Awardを受賞しました。

受賞者:MAVEN Science Team(寺田直樹准教授、中川広務助教、寺田香織研究員、黒田剛史客員研究員を含む)

賞名:NASA Group Achievement Award

受賞日:2016年12月

 

[2016/10/8] 北くんのひさき衛星を用いた結果がEOS誌に

木星オーロラは地球のオーロラとは違い、非常に強力なオーロラが常に観測されています。このオーロラは主に赤外線や紫外線で観測が行われており、時間変化や空間変化に関する議論が交わされています。

これまでのハッブル宇宙望遠鏡や地上望遠鏡などの大型施設を用いた観測は、年間に数日~1,2週間しか使用できませんでした。数時間~数週間の時間スケールでダイナミックに変化する惑星磁気圏を調べるには、より連続した観測が必要になってきます。

JAXAのひさき衛星は極端紫外の分光観測衛星で、惑星大気・磁気圏を主な観測ターゲットにしています。ひさき衛星も木星オーロラを観測していますが、この衛星の特徴的な点は長期観測できる点にあります。ひさき衛星の連続性を最大限に活用し、木星オーロラの新たな特性が解明されており先日EOS誌で特集されました

まだまだ謎が多い木星ですが、今後もひさきと共に研究を進めていくことで次第に明らかになっていくことでしょう。

Kita, H.; Kimura, T.; Tao, C.; Tsuchiya, F.; Misawa, H.; Sakanoi, T.; Kasaba, Y.; Murakami, G.; Yoshioka, K.; Yamazaki, A.; Yoshikawa, I.; Fujimoto, M. (2016), Characteristics of solar wind control on Jovian UV auroral activity deciphered by long-term Hisaki EXCEED observations: Evidence of preconditioning of the magnetosphere?, Geophys, Res. Lett., 43, 6790-6798, DOI:10.1002/2016GL069481.

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Credits: NASA, ESA, and J. Nichols (University of Leicester)

[2016/10/1] 木星探査機JUICE/RPWI-Japan 紹介 @ 遊星人(日本惑星科学会誌)

(by 笠羽)
欧州宇宙機関(ESA)の木星探査機JUICE(JUpiter Icy Moon Explorer:2022年打ち上げ)に搭載される「Radio and Plasma Wave Investigation」(RPWI: 電波・プラズマ波動探査装置)の紹介記事が,遊星人(日本惑星科学会誌)最新号で出版されました.欧州との共同作業なので全体として何がどう動いているのか見えにくいと思いますが,関係諸氏は恐縮ですがざっと眺めてご理解いただけると幸いです.
なお,以下の流れを部分部分で組んでいますが,低温・高放射線といった環境も違いますし,見る対象も組む相手も違うので,ほとんど新規です.まあ,新規だからやる気も起きる.
<礎となった先行missions> Akebono / Geotail / Nozomi / Kaguya / ERG / BepiColombo

みんなでふたたび木星へ,そして氷衛星へ  その4 ~電波・プラズマ波動観測器 RPWIの飛翔へ,
日本惑星科学会誌, 25, 3, 96-107, 2016.  (Author: 笠羽 康正, 三澤 浩昭, 土屋 史紀, 笠原 禎也, 井町 智彦, 木村 智樹, 加藤 雄人, 熊本 篤志, 小嶋 浩嗣, 八木谷 聡, 尾崎 光紀, 石坂 圭吾, 垰 千尋, 三好 由純, 阿部 琢美, Baptiste Cecconi, 諸岡 倫子, Jan-Erik Wahlund, JUICE-RPWI日本チーム)

JUICE RPWI EM2 (2016/10)

なお直近のニュース: 懸案の1つであった「9/24-26に,明星電気でPreampボックス(RWI)EM-1号機の振動試験を実施.打上振動に耐えることは証明した.(・・・が,ちょっと改良しようかな,とも思った.明星のみなさま & ポーランドのみなさまと相談中)」です.

本学では,私(RPWI 副主任研究者,日本側の代表・開発統括),および以下の方々が主力として絡んでいます.国内では金沢大・京大・名古屋大・RIKEN等,国外ではスウェーデン(全体まとめ)・ポーランド・フランス・チェコ・オーストリア・イギリス・・・と,多くの皆様のお手伝いを頂きつつ.

・三澤浩昭 准教授(惑星プラズマ・大気研究センター [惑星電波観測]): 日本側担当の高周波レシーバ,特に電波プリアンプ(RWI)の開発.木星周回探査機の外に暴露されて低温・高放射線に耐え抜くことを要請される,最も難易度が高い部分です.衛星開発は初ですが,PPARCの地上電波望遠鏡の総責任者であり,能力は証明済.

・土屋 史紀 助教(惑星プラズマ・大気研究センター [惑星電波観測]): 日本側担当の高周波受信部,特にレシーバ(HF)とその制御ソフトの開発.欧州側との複雑なI/Fを仕切る,これまた難易度が高い部分です.PPARCの地上電波望遠鏡開発や,Hisaki・ERGでその能力は証明済.

・熊本 篤志 准教授(地球物理学専攻 [宇宙電磁気]):木星電波の反射を応用したガニメデ・オイロパの氷地殻(とその下の地下海)の探査を行う「パッシブレーダー機能」の開発.そもそも行ってみないと本当にできるかどうかは不明という,これまたしんどい部分です.Akebono・Nozomi・Kaguya・ERGで,その能力は証明済.

・加藤 雄人 准教授(地球物理学専攻 [宇宙電磁気]): 他機器のデータとまとめて探査機内での高度データ処理を行う S-WPIA機能(ソフトウェア型波動-粒子相互作用解析装置)の開発.ERGで初めて搭載する機能なのでその実証を要しますが,惑星への展開は史上初.

<関連>
記事:[2016/7/21-15] 木星探査機JUICE/RPWIチーム会議
記事:[2016/2/7-21] 欧州木星探査機JUICE: RPWI – EM1統合試験
記事:[2016/1/23-24] SUBARU木星観測:COMICS
記事:[2015/4/20-24] 欧惑星探査機への巡業:火星探査機と木星探査機
記事:[2015/1/30-2/2] 木星観測@Subaru, ハワイ

#木星探査機JUICEについては以下もご参照下さい。
・日本側事情 https://juice.stp.isas.jaxa.jp/
・欧州側事情 http://sci.esa.int/juice/JUICE (Credit: ESA)

[2016/9/29] ERG衛星:内之浦(打上場)へ移動

(by 笠羽)
本学・地球物理学専攻メンバーが以下のスキームで中核を担ってきた JAXAのジオスペース観測衛星・ERG (Exploration of energization and Radiation in Geospace) が,2016年度末の打ち上げを目指して,JAXA・内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)へ移動します.これに先立って,JAXA宇宙科学研究所(相模原)で9/29に報道公開が行われました.(私はスイス・ベルンで今週開催中だった「JAXA 紫外線・極端紫外線望遠鏡衛星Hisakiのサマリ会合」に仙台からTV会議で出ており,「そう聞いた」だけではありますが.)

この衛星は,地球周辺の宇宙空間に広がる高エネルギー電子が蓄積される「バンアレン帯(放射線帯)」の成因を調べるため,電子と電磁場を同時観測してその相互作用を解明するものです.本学は地球・太陽・惑星における高エネルギー現象の研究を主目標のひとつとしてきており,この衛星はこの目標に向けた長年の研究における画期となります.内之浦でのフライト前最終試験は,10月から開始されます.

ERG衛星 20160930 (© JAXA)相模原における出荷前のERG (©JAXA)

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<東北大学からの参画>
・小野 高幸 名誉教授(元・地球物理学専攻):元・プロジェクト全体の主任研究者(PI).在職時の2013年の12月にご逝去.後継は,本学出身(地球物理学専攻)の三好由純准教授(名古屋大・宇宙地球環境研究所 准教授).

・わたくし – 笠羽 康正 教授(地球物理学専攻 [惑星大気物理]):本衛星に搭載される PWE(電場・プラズマ波動観測機)の主要メンバー.2015年まで主任研究者.2016年以降,笠原禎也教授(金沢大・電子情報科学専攻)へ交代し,現在は副主任研究者,15m長で衛星から展開される4本のワイヤアンテナ(WPT-S)とDC電場レシーバ(EFD)の責任者,およびオンボードデータ処理部のコア部開発担当.
電場・プラズマ波動観測は,日本の宇宙科学衛星において長年東北大他が担ってきたもので,本学にとっては大家寛 名誉教授,小野 名誉教授の松明を継ぐものでもある.PWEは,2018年打上予定の日欧合同水星探査機BepiColomboに搭載されるPWE(電場・プラズマ波動観測機)の技術を先行して地球周回に展開するもので,欧州宇宙機関(ESA)が2022年に打上予定の木星・氷衛星探査機 JUICE(JUpiter ICy moons Exploler)に搭載されるRPWI(電波・プラズマ波動観測機)にも受け継がれる.(笠羽は前者の主任研究者,後者の副主任研究者・日本側チーム代表)

・熊本 篤志 准教授(地球物理学専攻 [宇宙電磁気]):PWE を構成する HFA(高周波電波レシーバ)の責任者.BepiColombo-PWI・JUICE-RPWIにおける開発担当を兼ねる.

・土屋 史紀 助教(惑星プラズマ・大気研究センター [惑星電波観測]):PWE を構成する HFA の開発,特にオンボード・地上データ処理部を担う.JUICE-RPWI における開発担当を兼ねる.

・加藤 雄人 准教授(地球物理学専攻 [宇宙電磁気]):本衛星に搭載される S-WPIA(ソフトウェア型波動-粒子相互作用解析装置の開発担当,特に大規模数値シミュレーションによる動作原理の開発.主任研究者は,小嶋浩嗣 准教授(京大・生存圏研究所).
この装置は,PWEなど複数機器の観測データをまとめて衛星内で高次処理するもので,この種の「衛星内高度データ処理」は非常に珍しい.ERG衛星は地球の放射線帯を構成する相対論的エネルギー電子の成因を調べることを主目的に据えるが,本装置はその主役となる

他にも,小原隆博教授(惑星プラズマ・大気研究センター・センター長)らが高エネルギー粒子観測,坂野井健 准教授(惑星プラズマ・大気研究センター[惑星分光観測])らが地上オーロラ観測などで参加し,グループ総動員でこのミッションを支えていくことになる.
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<報道>
河北新報  http://www.kahoku.co.jp/naigainews/201609/2016092901001528.html
共同通信 http://this.kiji.is/154175409391304708?c=110564226228225532
朝日新聞 http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/asahi/nation/ASJ9Y4PWMJ9YULBJ007
毎日新聞  http://mainichi.jp/articles/20160930/ddp/012/040/015000c
産経新聞 http://www.sankei.com/photo/story/news/160929/sty1609290021-n1.html
東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016092901001528.html
神奈川新聞 http://www.kanaloco.jp/article/202521
静岡新聞  http://www.at-s.com/news/article/science/286750.html
中日新聞 http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016092901001528.html
神戸新聞 https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/201609/0009537178.shtml
高知新聞 https://www.kochinews.co.jp/article/52455/
西日本新聞 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/article/278357
長崎新聞 http://www.nagasaki-np.co.jp/f24/CO20160929/sc2016092901001528.shtml
日刊工業新聞   https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00401566

宇宙作家クラブ http://www.sacj.org/openbbs/ (えらく細かい.うーむPWE所属のMSCの写真もあるな.仕事中に撮ったものは公開できないはずなのが,こういうイベントで撮ったらいいわけですね.)
Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160929-00000145-jij-sctch

NHK http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160929/k10010711621000.html
テレビ朝日 http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000084535.html

放射線帯(ヴァンアレン帯)を飛翔するであろうERG衛星の図.
せっかく上杉神社でお札も頂いたので,無事の旅立ちを祈る(© ERG project)
ERG (© ERG project)

火星大気大循環モデル(MGCM)による火星古大気シミュレーション

現在の火星には液体の水が流れた痕跡が数多く残されており、こうしたことから太古の火星は液体の水が存在できるような温暖で湿潤な環境であったと考えられてきました。

しかし、現在まで様々なモデルによって火星の古大気がシミュレーションされてきましたが、未だ液体の水が存在できる環境を再現できておらず、私は様々な物理過程を考慮することで、この謎を解き明かしていきたいと考えています。 鎌田 有紘[M1]

左図:1000hPaでのCO2積雪分布
右図:1000hPaでの年平均地表気温

hcapav-1000hpaTsav-1000hpa

シミュレーションによる木星内部磁気圏の研究

木星の衛星イオからはガスやプラズマが木星磁気圏に放出されています。そのガスやプラズマはイオ軌道上にドーナッツ状に分布しています。これをイオプラズマトーラスと言います。

Hisaki衛星搭載の極端紫外線分光器EXCEEDによって、イオプラズマトーラス発光分布が朝側と夕側で非対称に変動することが観測されました。この非対称の変動はイオ軌道上に~3-7[mV/m]の電場が朝夕方向にかかることで説明でき、この電場の起源として太陽風の影響が示唆されています。

私は、この電場が本当に太陽風の影響により生成されるのかどうかをコンピューターシミュレーションを用いて解析しています。

研究紹介

 

上の図は木星磁気圏赤道面上のポテンシャル分布の解析結果です。中央の白い円が木星本体です。横軸は太陽から離れる方向を正に取っています。つまり、この図の左側に太陽があります。縦軸は木星の公転方向を正にしています。つまり、図の上側が朝側で、下側が夕側です。

朝側で赤くなっておりポテンシャルが正になっているのことが分かります。一方、夕側では青くなっており負に分布しています。このことから、朝側から夕側にかけて電場がかかっていることが確認できました。

[寺田綱一朗]

 

赤外レーザーヘテロダイン分光器 MILAHI

予てより中川広務助教が押し進めていた赤外レーザーヘテロダイン分光器の開発の経過です。前回の記事はこちらにアクセス下さい。

我々が開発を行って来たヘテロダイン分光器(MILAHI: Mid-Infrared LAser Heterodyne Instrument)は、2014年にハワイ・マウイ島ハレアカラ山頂の東北大学60cm望遠鏡への取り付けが完了しました。そこからは、実際の望遠鏡を用いた試験観測を実施して参りました。様々なemission改良を重ね、幾度の調整を施し、左図のような金星からのスペクトルを取得することが可能になってきました。

現地での試験観測は一区切りし、現在は東北大学内の実験室で改良の検討をしている段階です。

来年の1月より地上からの金星観測の条件が良くなってきます。次の観測では、JAXA・ISASの金星探査機あかつきとの同時観測を目指して、準備を進めております。

高見

 

金星中間圏の風速場、温度場の導出

absorptionwindtemperature

[(左) MILAHIで取得されるCO2スペクトル、(中央) 風速鉛直分布、(右) 温度鉛直分布]

金星の中間圏は高度70-110kmとされ、雲の層と熱圏下層を繋ぐ領域です。ここでは、物質とエネルギーの輸送が行われている領域となります。今までは、この高度領域の観測例が少なく穴となっていました。我々は地上から赤外ヘテロダイン分光法を用いて、この高度の中間圏のCO210µm帯のスペクトルを観測します。そのスペクトルにNICTで開発された反転解析計算(AMATERASU)により風速、温度の鉛直分布を導出します。本研究では、ハワイ、ハレアカラ山頂にある東北大学60cm望遠鏡(T60)に常設されている赤外ヘテロダイン分光器(MILAHI)を用いての連続観測を行っていく予定です。

高見