火星大気大循環モデル(MGCM)による火星古大気シミュレーション

現在の火星には液体の水が流れた痕跡が数多く残されており、こうしたことから太古の火星は液体の水が存在できるような温暖で湿潤な環境であったと考えられてきました。

しかし、現在まで様々なモデルによって火星の古大気がシミュレーションされてきましたが、未だ液体の水が存在できる環境を再現できておらず、私は様々な物理過程を考慮することで、この謎を解き明かしていきたいと考えています。 鎌田 有紘[M1]

左図:1000hPaでのCO2積雪分布
右図:1000hPaでの年平均地表気温

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火星電離圏界面におけるKH不安定の数値シミュレーション

渦

火星は地球のような固有磁場をもたない、非磁化惑星と呼ばれる惑星です。そのため、惑星の超高層大気は太陽から吹き付けるプラズマや磁場と直接相互作用する環境にあります。この相互作用によって惑星の電離大気が宇宙空間へ流出することがわかっており、火星の長い大気環境の変化に大きな影響を与えてきたと考えられています。私は、この太陽風プラズマと惑星電離大気の界面に発生しうると考えられるケルビン–ヘルムホルツ(KH)不安定に着目し、これを介した大気散逸現象を数値シミュレーションを用いて研究しています。

Because the Mars has no intrinsic magnetic field, the solar wind flow directly interacts with the planetary ionosphere. As a result of this interaction, ionospheric ions can escape from Mars and this is the one of important processes to understand of atmospheric evolution on Mars. Focusing on the Kelvin-Helmholtz (KH) instability which can occur the boundary between solar wind plasmas and ionospheric plasmas and using numerical method, we would like to understand its physical mechanisms and how much ions can escape from Mars through the KH instability.

[相澤]

金星超高層大気におけるフラックスロープの生成モデル

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惑星の超高層大気の一部は、大気が電離したプラズマ状態になっています。一般的にプラズマは、周りの磁場の影響を受けて運動する性質があります。そのため、惑星の超高層大気を考える上で、その磁場環境を理解することは大変重要です。
金星は固有の磁場を持たない非磁化惑星ですが、太陽風との相互作用により、超高層大気中には磁場が存在します。金星の昼側の下部電離圏では、磁力線がロープのようにねじれたフラックスロープと呼ばれる微細構造がしばしば観測されます。このフラックスロープに関して、これまでいくつかの生成モデルが提案されてきましたが、いまだにその生成メカニズムはよくわかっていません。そこで我々は、磁気リコネクションと呼ばれるプラズマ過程に注目して、フラックスロープの新たな生成メカニズムを提案し、磁気流体(MHD)シミュレーションによりモデルの評価を行うことで、金星の磁場環境及び超高層大気のさらなる理解を目指します。(阪本 仁)

GCMを用いた金星硫酸雲生成・消失と大気化学過程の研究

Credit by ESA

Credit by ESA

金星の上空約50−70kmには硫酸でできた分厚い雲が全球に存在しています。この雲は太陽からの光を反射、吸収し、放射することで大気大循環に影響を与えていると考えられています。また、この雲は時間、空間的に変動していることが知られています。私はこの変動を金星大気大循環モデル(Venus General Circulation Model, VGCM)を用いてコンピュータ上で再現することで、硫酸雲の生成・消滅機構や分布について研究しています。現在、私は化学反応を考慮した硫酸蒸気変動の再現を試みており、将来的には硫酸雲からの放射を再現し、その影響を明らかにすることを目指しています。(伊藤一成)

火星大気散逸の数値シミュレーション

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現在の火星は地球に比べて大気が薄く、その気候は寒冷で乾燥し、生命活動には過酷な環境です。しかし、近年の衛星探査によって、かつては地球と同様分厚い大気をもつ、温暖で湿潤な惑星であったと分かってきました。何故火星に存在した大量の大気・水は失われてしまったのでしょうか?そして、結果として生命の存在しない「死の惑星」となってしまったのでしょうか?その主な原因の1つは宇宙空間への大気の流出だといわれいます。私はこの火星からの大気流出を、数値シミュレーションによって調べています。現在は、特に酸素の流出の太陽活動に対する依存性を明らかにしようとしています。

大気散逸の数値シミュレーション

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太陽風や太陽放射の影響によって、惑星の大気が宇宙空間に剥ぎ取られる「大気散逸」現象。大気散逸現象は、惑星大気の散逸を引き起こす物理機構そのものが研究対象として魅力的であるだけでなく、惑星大気の進化や多様性が生じる原因を理解し、ハビタブル惑星(生命が居住可能な惑星)が成立する条件を理解する上でも重要です。私達は、非磁化惑星の電離圏と太陽風の相互作用を包括的に解く電磁ハイブリッド(粒子イオンと流体電子の混成)シミュレーションや磁気流体力学(MHD)シミュレーションのコードを世界に先駆けて開発し、惑星起源の電離大気がどのような物理機構により、どのような経路で宇宙空間に散逸するのかを理論的なアプローチで明らかにしてきました。また、理論・シミュレーションに加えて、東北大学が参画する衛星ミッションや地上望遠鏡プロジェクトとの連携を進め、火星、金星、系外惑星などにおける電離・中性大気散逸機構と大気進化の解明、およびハビタブル惑星の成立条件の理解を目指しています。

 

火星大気大循環モデルの開発

Credit by NASA

Credit by NASA

火星は地球に比べて寒冷・乾燥し大気が薄く、その環境の特徴としては起伏の激しい地形、ドライアイスの極冠、時に全球規模に広がるダストストームの存在などが知られています。その一方で太古の火星地表面には液体の水が潤沢に存在した証拠がいくつも発見されており、その水の多くは太陽風により宇宙空間に散逸したと考えられる一方で、北極氷床および地下水(地下氷)としてかなりの量の水が現在の火星に存在することも知られています。
火星大気大循環モデルDRAMATIC (Dynamics, RAdiation, MAterial Transport and their mutual InteraCtions) MGCMは東京大学・国立環境研・JAMSTECにより共同開発された地球大気モデルを火星環境に作り替えたもので、二酸化炭素とダストの放射効果・二酸化炭素の相変化など火星独自の物理過程を取り扱うスキームを開発してモデルに導入し、大気温度・地表面気圧・ドライアイス極冠などの季節変化を再現、ダストストームによる大気の循環の変化などの研究に活用されました。
さらに水や二酸化炭素氷雲などの物質循環の導入に着手し、観測データとほぼ整合する水蒸気のカラム積算量および存在限界高度の季節変化が得られています。また中層大気(高度50km以上)に見られる二酸化炭素氷雲の季節・緯度分布についても観測データと整合する結果が得られています。さらに火星大気における水同位体比の観測を見据えたHDO循環の導入にも着手し、先行理論研究と整合するHDO/H2O比の緯度および季節変化を再現しました。

Mars has colder environment in comparison with Earth, with dry and thin atmosphere, rough topography, seasonal CO2 ice cap, and dust storms which sometimes expand to planet-encircling. On the other hand, there are many topographic evidences which indicate the existence of rich liquid water on the surface of old Mars. Most of the water is thought to be escaped into space by interactions with the solar wind, while not a little water has been found in the north polar cap and underground. We have developed a Mars General Circulation Model named DRAMATIC (Dynamics, RAdiation, MAterial Transport and their mutual InteraCtions), based on the terrestrial atmospheric model developed in the Univ. of Tokyo, NIES and JAMSTEC, by introducing some physical schemes specific on Mars such as the radiative effects of CO2 and dust and the phase changes of CO2. The model well reproduces the seasonal changes of temperature field, surface pressure and CO2 polar ice distribution, and has been used for the investigations of atmospheric dynamics such as the change of atmospheric circulation in different dust opacity. Moreover, we are starting the implementation of the material transport schemes such as water and CO2 ice clouds, and have reproduced consistent distributions of water vapor column density and hygropause with observations. We have also reproduced consistent seasonal and latitudinal distributions of CO2 ice clouds in middle atmosphere (higher than ~50 km) with observations. We have also implemented the HDO cycle for the future observations of the water isotopic ratios on Mars, and have reproduced consistent seasonal and latitudinal changes of HDO/H2O ratio distributions with the previous theoretical studies.