火星中層大気CO中の炭素同位体比の観測
現在の火星は0.006 気圧の薄い大気で構成されていますが、40億年前は 0.5 気圧以上の厚い大気を保持していたと考えられています。(Kurokawa et al., 2017)
“太古火星の厚い大気が、どこへ・どのように失われていったのか?”
そして
“現在の火星はどのようになっているのか?”
は近年の惑星研究において重要な研究テーマとなっています。
同位体は中性子の数が異なる、つまり、質量がわずかに違う核種のことですが、その存在割合(=同位体比)は簡単に変わるものではなく、限られたプロセスによってのみ変化することが知られています。
このような理由から、同位体比は、上にあげた大気進化や循環のヒントを知る重要なパラメータとして非常に注目されているのです。
現在の火星大気は95%以上がCO2を占めていますが、炭素の同位体比が変化する要因としては、
・宇宙空間への流出
・拡散
・光解離
が考えられています。
そこで私は、欧州火星探査衛星TGOに搭載されたNOMADの赤外スペクトルデータを解析することで、
「光解離によって、CO中の炭素同位体比はどれくらい変化するのか」
を明らかにしようとしています。
将来的には、COのみならずCO2中の同位体比の解析や、本研究室の一次元光化学モデル(Yoshida et al., 2023)との比較などを通して、炭素同位体比の変化の原因をより詳細に突き止めていきたいと考えています。
(修士2年・塩原輝満恵)
画像:ExoMars Trace Gas Orbiter (TGO)
(credit : https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2014/01/ExoMars_Trace_Gas_Orbiter)