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本研究室は、地球を含む惑星を舞台に、惑星大気変動・進化学の学理の探求と人類の未知の開拓に挑んでいます。研究とは、見えなかったものを見る、できなかったことを可能にするもの。未だ見ぬ世界に挑戦する強い意欲を持ち、自由な発想と創造力を持つ皆さんの参加を待っています。 (教授 寺田 直樹)
惑星大気の行方地球や惑星の大気は、太陽紫外放射や太陽風(太陽から常時吹き出す超音速のプラズマ流)の影響を受けて、宇宙空間に絶えず流出しています。惑星が保有する大気量や組成比は、この宇宙空間への大気の流出によって、数〜数十億年スケールの長い時間をかけて変遷してきたと考えられています。本研究室では、衛星観測・地上観測・数値シミュレーションを組み合わせて、この惑星大気の宇宙空間への流出を研究しています。火星大気中に存在する酸素が1億年間で全て失われるほどの大きな流出率を、1988年打ち上げの旧ソ連のフォボス2探査機が観測して以来、火星大気の宇宙空間への流出は重要な科学課題として注目されてきました。日本初の火星探査ミッション「のぞみ」は、この大気の流出現象や超高層での太陽風の相互作用過程を調査すべく1998年に打ち上げられ、東北大学C領域はプラズマ波動観測装置や紫外線撮像分光計の開発を担当しミッションの中核を担いました。しかし残念ながら飛行中のトラブルにより、「のぞみ」探査機の火星周回軌道への投入は成功に至りませんでした。2000年代に入ってからの欧米の火星探査機による地形解析や水和鉱物の観測等によって、火星には、その歴史の初期に大量の液体の水を湛えた時期があったことが明らかとなりました。しかし、なぜそのような温暖湿潤な環境から、現在の寒冷乾燥した環境へと変貌を遂げたかは未だ良くわかっていません。この劇的な環境変化を引き起こした要因の候補として、宇宙空間への大気の流出が注目されています。米国NASAの火星探査機MAVENは、2013年11月18日にケープカナベラレルから打ち上げられました。MAVEN探査機は、火星大気の宇宙空間への流出の理解を目的としています。我々のグループは、東京大学・JAXA宇宙科学研究所・ドイツマックスプランク太陽系研究所(MPS)と協力して、MAVEN衛星の科学チームの一員として参画し、独自の数値計算コードと最新の観測技術により惑星大気の進化解明に挑み続けています。
温暖湿潤だったと考えられている過去の火星(想像図、左)と乾燥寒冷な現在の火星(右)(copyright NASA)