独自の地上観測装置開発

惑星の大気現象や電磁現象は、様々なタイムスケールでダイナミックに変動しており、それらを理解するためには、長時 間連続して観察する必要があります。しかし、すばるなどの大型望遠鏡は、一般的に公募型のため、長期に連続観測を実 施することは不可能です。我々は、惑星を連続的に監視可能な自前の観測施設に最先端の装置を実装することで、世界的にもユニークな観測網を展開しています。

我々の研究室では1985年から赤外ヘテロダイン分光器を世界に先駆けて開発し、オゾンなどの地球微量大気の研究に役立ててきました。近年ドイツ・ケルン大学やNASAと協力して、 発展が目覚ましい量子カスケードレーザを応用することで、 惑星観測専用の赤外ヘテロダイン分光器MILAHIの開発に成 功しました。中間赤外域でその波長分解能は100万を越えま す。その優れた波長分解能を生かした観測により、通常観測が困難とされる惑星中間圏の風速場・温度場を地上から得ることができます。これは、大気の領域間結合を理解するのに重要です。また、近年、東北大学・工学部が開発した新たな 高効率の中空ファイバを同システムに導入して、次世代宇宙機搭載機器への転用を目指した改良を開始しました。

近年、金星探査機「あかつき」との連携観測を実施するため、ハワイ・ハレアカラ山頂に本学が開発した赤外ヘテロダイン分光器を実装して、金星観測を実施し、これまで観測できなかった高度70-100 kmの風速・温度を求めることに成功しました(Takami et al., 2020)。また、2018年に発生した火星全球を覆うダストストーム 時の大気応答を観測し、高度80 kmにおいて約200 m/sにも及ぶ高速の東西風が吹いていることを発見しました。これは静穏時に比べて100 m/sも速く、理論による考察からダストストーム で下層大気において強められたハドレー循環と大気重力波が東西風加速に寄与した可能性を示唆しました(Miyamoto et al., in prep.)。 (助教 中川 広務)

英語