冥王星の大気、急速に崩壊中か ―星を隠す瞬間の観測によって初解明―

https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20200615-11134.html

有松亘 理学研究科研究員を中心とする研究グループは、ハワイ・ハレアカラ山頂の東北大学T60望遠鏡を使用して、2019年7月に冥王星によって恒星が隠される「掩蔽 (えんぺい) 」とよばれる現象の観測に成功しました。掩蔽観測データを詳細に解析した結果、掩蔽観測時の冥王星の大気圧が2016年の観測結果と比べて約20%低下したことを発見しました。1988年に冥王星の大気が発見されて以来、その大気圧は単調に上昇しつづけてきましたが、本結果はこれまでの観測傾向とは真逆の変化を示しています。今回発見された急速な大気圧の低下は理論モデルでも予測されておらず、現在の冥王星では予想外のペースで大気の主成分である窒素ガスが表面に凝結して凍りつき、大気の崩壊が進んでいる可能性があります。今後も恒星掩蔽を継続的に観測することで、いまだ謎の多い冥王星の大気の特性と今後の運命が明らかになると期待されます。

本成果は、2020年6月15日にヨーロッパの国際学術誌「Astronomy & Astrophysics」にオンライン掲載されます。なお本論文は掲載論文のなかでも特に注目すべき論文として、同誌編集者が選ぶハイライト論文に選出されました。