[2016/10/1] 木星探査機JUICE/RPWI-Japan 紹介 @ 遊星人(日本惑星科学会誌)

(by 笠羽)
欧州宇宙機関(ESA)の木星探査機JUICE(JUpiter Icy Moon Explorer:2022年打ち上げ)に搭載される「Radio and Plasma Wave Investigation」(RPWI: 電波・プラズマ波動探査装置)の紹介記事が,遊星人(日本惑星科学会誌)最新号で出版されました.欧州との共同作業なので全体として何がどう動いているのか見えにくいと思いますが,関係諸氏は恐縮ですがざっと眺めてご理解いただけると幸いです.
なお,以下の流れを部分部分で組んでいますが,低温・高放射線といった環境も違いますし,見る対象も組む相手も違うので,ほとんど新規です.まあ,新規だからやる気も起きる.
<礎となった先行missions> Akebono / Geotail / Nozomi / Kaguya / ERG / BepiColombo

みんなでふたたび木星へ,そして氷衛星へ  その4 ~電波・プラズマ波動観測器 RPWIの飛翔へ,
日本惑星科学会誌, 25, 3, 96-107, 2016.  (Author: 笠羽 康正, 三澤 浩昭, 土屋 史紀, 笠原 禎也, 井町 智彦, 木村 智樹, 加藤 雄人, 熊本 篤志, 小嶋 浩嗣, 八木谷 聡, 尾崎 光紀, 石坂 圭吾, 垰 千尋, 三好 由純, 阿部 琢美, Baptiste Cecconi, 諸岡 倫子, Jan-Erik Wahlund, JUICE-RPWI日本チーム)

JUICE RPWI EM2 (2016/10)

なお直近のニュース: 懸案の1つであった「9/24-26に,明星電気でPreampボックス(RWI)EM-1号機の振動試験を実施.打上振動に耐えることは証明した.(・・・が,ちょっと改良しようかな,とも思った.明星のみなさま & ポーランドのみなさまと相談中)」です.

本学では,私(RPWI 副主任研究者,日本側の代表・開発統括),および以下の方々が主力として絡んでいます.国内では金沢大・京大・名古屋大・RIKEN等,国外ではスウェーデン(全体まとめ)・ポーランド・フランス・チェコ・オーストリア・イギリス・・・と,多くの皆様のお手伝いを頂きつつ.

・三澤浩昭 准教授(惑星プラズマ・大気研究センター [惑星電波観測]): 日本側担当の高周波レシーバ,特に電波プリアンプ(RWI)の開発.木星周回探査機の外に暴露されて低温・高放射線に耐え抜くことを要請される,最も難易度が高い部分です.衛星開発は初ですが,PPARCの地上電波望遠鏡の総責任者であり,能力は証明済.

・土屋 史紀 助教(惑星プラズマ・大気研究センター [惑星電波観測]): 日本側担当の高周波受信部,特にレシーバ(HF)とその制御ソフトの開発.欧州側との複雑なI/Fを仕切る,これまた難易度が高い部分です.PPARCの地上電波望遠鏡開発や,Hisaki・ERGでその能力は証明済.

・熊本 篤志 准教授(地球物理学専攻 [宇宙電磁気]):木星電波の反射を応用したガニメデ・オイロパの氷地殻(とその下の地下海)の探査を行う「パッシブレーダー機能」の開発.そもそも行ってみないと本当にできるかどうかは不明という,これまたしんどい部分です.Akebono・Nozomi・Kaguya・ERGで,その能力は証明済.

・加藤 雄人 准教授(地球物理学専攻 [宇宙電磁気]): 他機器のデータとまとめて探査機内での高度データ処理を行う S-WPIA機能(ソフトウェア型波動-粒子相互作用解析装置)の開発.ERGで初めて搭載する機能なのでその実証を要しますが,惑星への展開は史上初.

<関連>
記事:[2016/7/21-15] 木星探査機JUICE/RPWIチーム会議
記事:[2016/2/7-21] 欧州木星探査機JUICE: RPWI – EM1統合試験
記事:[2016/1/23-24] SUBARU木星観測:COMICS
記事:[2015/4/20-24] 欧惑星探査機への巡業:火星探査機と木星探査機
記事:[2015/1/30-2/2] 木星観測@Subaru, ハワイ

#木星探査機JUICEについては以下もご参照下さい。
・日本側事情 https://juice.stp.isas.jaxa.jp/
・欧州側事情 http://sci.esa.int/juice/JUICE (Credit: ESA)