ESAプレスリリース “火星大気の一酸化炭素は炭素13に乏しいことが明らかに”

東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻の青木翔平講師と本研究室の吉田辰哉特任研究員らの研究チームは、欧州火星探査機ExoMars Trace Gas Orbiterの観測データを用いて、火星大気に存在する一酸化炭素が炭素13※1に乏しい事を明らかにしました。これは火星大気の主成分である二酸化炭素が、太陽からの光を受けて一酸化炭素に分解される際に、炭素12がより選択的に壊されるためであると考えられます。火星地表面上で見つかっている有機物も炭素13に乏しい事から、大気の光化学が有機物を作る過程で重要な役割を担った可能性を示唆しています。吉田特任研究員は大気モデルを用いて火星大気の一酸化炭素が炭素13に乏しいことを予測し、今回の解析結果が理論とも整合的であることを示すことに寄与しました。

※1 炭素13: 炭素の安定同位体で、通常の炭素12に比べて中性子が1つ多い。

欧州宇宙機関(ESA)によるプレスリリース (2023年5月31日)
“Unusual carbon balance at Mars explained by sunlight and chemistry, finds ExoMars”

 

Reference

1. Aoki, S., Shiobara, K., Yoshida, N., Trompet, L., Yoshida, T., Terada, N., … & Ueno, Y. (2023). Depletion of 13C in CO in the Atmosphere of Mars Suggested by ExoMars-TGO/NOMAD Observations. The Planetary Science Journal, 4(5), 97.
(https://iopscience.iop.org/article/10.3847/PSJ/acd32f/meta)
2. Yoshida, T., Aoki, S., Ueno, Y., Terada, N., Nakamura, Y., Shiobara, K., … & Koyama, S. (2023). Strong Depletion of 13C in CO Induced by Photolysis of CO2 in the Martian Atmosphere, Calculated by a Photochemical Model. The Planetary Science Journal, 4(3), 53.
(https://iopscience.iop.org/article/10.3847/PSJ/acc030/meta)

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