地下と大気の相互作用を含む火星水循環過程の解明
探査機が撮影した、火星の地表の様子を見たことはありますか?火星の表面はまるで砂漠のような環境で、「レゴリス」と呼ばれる砂粒で覆われています。火星のレゴリスは空隙を多く含むスカスカな物質であり、表面に水蒸気を吸着したり、隙間に氷を蓄えたりする性質があることが分かっています。
このレゴリスの中に存在する水が、昼間に大気中へと放出され、夜間に地下へと蓄えられることが近年の研究によって明らかになりました。しかし、この現象が火星の水循環にどれだけの影響を与えるかについては、まだよく分かっていません。また、火星のどこ(緯度・経度・深度)に地下氷が存在するのかも不明です。
そこで私は、火星の水循環過程と地下氷分布を明らかにするために、「大気大循環モデル(GCM)」を用いて研究を行っています。GCMとは、惑星で発生する様々な気象現象を3次元的にシミュレーションすることができるモデルです。GCMにレゴリスと大気の間の水交換過程を実装し、地下と大気の相互作用から、地下氷のありかに迫っています。地下と大気が結合したGCMを用いて火星の水循環を包括的に解く研究は、世界的にもユニークで挑戦的な課題です!(修士2年・古林)